急速充電とは
- 2020.02.11
- 規格
急速充電の種類
スマートフォンなどを充電する場合、基本的にはUSBの充電規格に従った充電となり最大(USB 3.x)でも5.0 V、0.9 A(4.5 W)での充電となります。最大の5.0 V、0.9 Aで充電したとしても充電速度が速いとは言えません。
スマートフォンなどの搭載バッテリーの容量が増加しており、従来の規格では充電時間が長くなってしまいます。このため、メーカーは充電時間を短くするための技術の開発を進めています。ここでは、従来のUSBの充電規格であるUSB3.xの充電規格5.0 V、0.9 A(4.5 W)を超えるものを急速充電としています。
各社が急速充電の開発を進めた結果、複数の急速充電規格が乱立し混乱を招いている状況です。主な急速充電規格は以下のものがあります。
- USB PD(USB標準規格)
- Apple 独自規格(Apple社の独自規格)
- Quick Charge(Qualcomm社の独自規格)
- Power IQ(Anker社の独自規格)
他にもスマートフォンメーカーの独自規格などがありますが、主なものは上の4つの規格です。Appleは新製品がUSB PDに対応しており、Quick ChargeとPowerIQも最新のバージョンではUSB PDと互換性を持たせた開発をしているため、急速充電に関してはUSB PDを中心に考えることとなりそうです。
PD(Power Delivery)とは
USB PD(USB Power Delivery:パワーデリバリー) USBの標準規格として制定された充電規格で最大20 V、5 A(100 W)まで対応する規格となります。現在はUSB PD 3.0というバージョンです。コネクタの形状は入出力側ともUSB Type-C(出力側がLightningコネクタのものもある)となります。
最近ではiPhone(8以降)や最新のAndoroid端末、ノートパソコンなどで採用が広がっています。
PDによる急速充電を行うためには、充電したい機器本体、充電器、ケーブルがそれぞれPDに対応していることが必要です。比較的安価な充電器、ケーブルが発売されているので本体がPDに対応している場合は充電器、ケーブルを交換してPD充電することができます。
PDに対応している主な製品
メーカー | 製品名 | ||||
Apple | iPhone 8以降 | 9V | 2A | 18W | |
iPad Pro 10.5 | 15V | 2A | 30W | ||
iPad Pro 11 | 15V | 2A | 30W | ||
iPad Pro 12.9(第2世代以降) | 15V | 3A | 45W | ||
iPad Air(第3世代以降) | 15V | 2A | 30W | ||
iPad mini 5 | 15V | 2A | 30W | ||
MacBook(2015以降) | 30W | *1 | |||
MacBook Air(2018以降) | 30W | *1 | |||
MacBook Pro 13(2016以降) | 61W | *1 | |||
MacBook Pro 15(2016以降) | 87W | *1 | |||
MacBook Pro 16(2019以降) | 96W | *1 | |||
pixel(国内全モデル) | 9V | 2A | 18W | ||
Samsung | galaxy(S8以降,Note8以降) | 9V | 2A | 18W | *2 |
SONY | Xperia XZシリーズ | 9V | 2A | 18W | |
Xperia Ace | 9V | 2A | 18W | ||
Xperia 1,5,8 | 9V | 2A | 18W | ||
Huawei | P10以降 | 9V | 2A | 18W | *3 |
*1 appleの純正充電器のW数を記載しています。
*2 18W以上の対応状況は確認中です。
*3 18W以上の対応状況は確認中です。
Apple独自規格
Apple独自規格とは、USBの標準規格では最大0.9Aであったものを最大2.4Aまで増加させるものです。iPhoneでは6以降で対応、iPadも一部の機種で対応しているようですが、公式に発表されているものではないため詳細は不明です。
PDに対応している機種ではPDの方が速いため、PD充電の方が有利ですが、iPhone 7などPDに非対応の機種では有効な充電手段となります。
Apple独自規格の充電を行うためには、2.4A以上の出力に対応した充電器と充電ケーブルが必要となります。なお、ケーブルに関してはMFI認証(Appleがサードパーティー製品の互換性を認めるもの)を取得している製品を使用することをお勧めします。認証がないものでは充電できない可能性があります。
Quick Charge
Quick ChargeはQualcomm社が開発した充電規格でQuick Charge 1.0~4.0までのバージョンがあり、3.0以降ではPDとの互換性を持たせてあるため実質的にPDとして扱って問題ないと考えられます。
Quick Chargeを利用するためにはQualcomm社のsnapdragonというチップセットを搭載したスマートフォン、タブレットが必要となり、さらにバージョンごとにチップセットのモデルの指定があるため、該当する機器はかなり限定されます。
電圧 | 電流 | 最大出力 | PD | |
Quick Charge 1.0 | 5V | 2A | 10W | |
Quick Charge 2.0 | 5V/9V/12V | 2A/3A | 36W | |
Quick Charge 3.0 | 3.6V ~ 12V | 2A/3A | 36W | |
Quick Charge 4.0 | 3.3V ~ 20V | 3A/5A | 100W | 互換性あり |
Quick Charge 4+ | 3.3V ~ 20V | 3A/5A | 100W | 互換性あり |
Power IQ
Power IQはAnker社が開発した充電規格でPower IQ 1.0~3.0までのバージョンがあり、3.0以降ではPDとの互換性を持たせてあるため実質的にPDとして扱って問題ないと考えられます。
Power IQはQuick Chargeとは異なり機種の制限はないため、Quick Chargeよりは使いやすい充電規格となります。
電圧 | 電流 | 最大出力 | PD | |
Power IQ 1.0 | 5V | 2.4A | 12W | |
Power IQ 2.0 | 5V/9V/12V | 1A~2.4A | 18W | |
Power IQ 3.0 | 5V/9V/15V/20V | 3A/5A | 100W | 互換性あり |
さいごに
現状では色々な急速充電規格が出てきていますが、USB PDに収斂していっているようです。スマートフォンとノートパソコンの充電器を共有することも可能なので、今後購入する電子機器をPD充電(又はType-Cコネクタ)に対応したものでそろえることで持ち運ぶ充電器、ケーブルを減らせるメリットもあります。
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