急速充電とは

急速充電とは

急速充電の種類

スマートフォンなどを充電する場合、基本的にはUSBの充電規格に従った充電となり最大(USB 3.x)でも5.0 V、0.9 A(4.5 W)での充電となります。最大の5.0 V、0.9 Aで充電したとしても充電速度が速いとは言えません

スマートフォンなどの搭載バッテリーの容量が増加しており、従来の規格では充電時間が長くなってしまいます。このため、メーカーは充電時間を短くするための技術の開発を進めています。ここでは、従来のUSBの充電規格であるUSB3.xの充電規格5.0 V、0.9 A(4.5 W)を超えるものを急速充電としています。

各社が急速充電の開発を進めた結果、複数の急速充電規格が乱立し混乱を招いている状況です。主な急速充電規格は以下のものがあります。

  • USB PD(USB標準規格)
  • Apple 独自規格(Apple社の独自規格)
  • Quick Charge(Qualcomm社の独自規格)
  • Power IQ(Anker社の独自規格)

他にもスマートフォンメーカーの独自規格などがありますが、主なものは上の4つの規格です。Appleは新製品がUSB PDに対応しており、Quick ChargeとPowerIQも最新のバージョンではUSB PDと互換性を持たせた開発をしているため、急速充電に関してはUSB PDを中心に考えることとなりそうです。

PD(Power Delivery)とは

USB PD(USB Power Delivery:パワーデリバリー) USBの標準規格として制定された充電規格で最大20 V、5 A(100 W)まで対応する規格となります。現在はUSB PD 3.0というバージョンです。コネクタの形状は入出力側ともUSB Type-C(出力側がLightningコネクタのものもある)となります。
最近ではiPhone(8以降)や最新のAndoroid端末、ノートパソコンなどで採用が広がっています。

PDによる急速充電を行うためには、充電したい機器本体、充電器、ケーブルがそれぞれPDに対応していることが必要です。比較的安価な充電器、ケーブルが発売されているので本体がPDに対応している場合は充電器、ケーブルを交換してPD充電することができます。

PDに対応している主な製品

メーカー製品名    
AppleiPhone 8以降9V2A18W 
 iPad Pro 10.515V2A30W 
 iPad Pro 1115V2A30W 
 iPad Pro 12.9(第2世代以降)15V3A45W 
 iPad Air(第3世代以降)15V2A30W 
 iPad mini 515V2A30W 
 MacBook(2015以降)  30W*1
 MacBook Air(2018以降)  30W*1
 MacBook Pro 13(2016以降)  61W*1
 MacBook Pro 15(2016以降)  87W*1
 MacBook Pro 16(2019以降)  96W*1
googlepixel(国内全モデル)9V2A18W 
Samsunggalaxy(S8以降,Note8以降)9V2A18W*2
SONYXperia XZシリーズ9V2A18W 
 Xperia Ace9V2A18W 
 Xperia 1,5,89V2A18W 
HuaweiP10以降9V2A18W*3

*1 appleの純正充電器のW数を記載しています。
*2 18W以上の対応状況は確認中です。
*3 18W以上の対応状況は確認中です。

Apple独自規格

Apple独自規格とは、USBの標準規格では最大0.9Aであったものを最大2.4Aまで増加させるものです。iPhoneでは6以降で対応、iPadも一部の機種で対応しているようですが、公式に発表されているものではないため詳細は不明です。
PDに対応している機種ではPDの方が速いため、PD充電の方が有利ですが、iPhone 7などPDに非対応の機種では有効な充電手段となります。

Apple独自規格の充電を行うためには、2.4A以上の出力に対応した充電器充電ケーブルが必要となります。なお、ケーブルに関してはMFI認証(Appleがサードパーティー製品の互換性を認めるもの)を取得している製品を使用することをお勧めします。認証がないものでは充電できない可能性があります。

Quick Charge

Quick ChargeはQualcomm社が開発した充電規格でQuick Charge 1.0~4.0までのバージョンがあり、3.0以降ではPDとの互換性を持たせてあるため実質的にPDとして扱って問題ないと考えられます。

Quick Chargeを利用するためにはQualcomm社のsnapdragonというチップセットを搭載したスマートフォン、タブレットが必要となり、さらにバージョンごとにチップセットのモデルの指定があるため、該当する機器はかなり限定されます。

 電圧電流最大出力PD
Quick Charge 1.05V2A10W 
Quick Charge 2.05V/9V/12V2A/3A36W 
Quick Charge 3.03.6V ~ 12V2A/3A36W 
Quick Charge 4.03.3V ~ 20V3A/5A100W互換性あり
Quick Charge 4+3.3V ~ 20V3A/5A100W互換性あり

Power IQ

Power IQはAnker社が開発した充電規格でPower IQ 1.0~3.0までのバージョンがあり、3.0以降ではPDとの互換性を持たせてあるため実質的にPDとして扱って問題ないと考えられます。

Power IQはQuick Chargeとは異なり機種の制限はないため、Quick Chargeよりは使いやすい充電規格となります。

 電圧電流最大出力PD
Power IQ 1.05V2.4A12W 
Power IQ 2.05V/9V/12V1A~2.4A18W 
Power IQ 3.05V/9V/15V/20V3A/5A100W互換性あり

さいごに

現状では色々な急速充電規格が出てきていますが、USB PDに収斂していっているようです。スマートフォンとノートパソコンの充電器を共有することも可能なので、今後購入する電子機器をPD充電(又はType-Cコネクタ)に対応したものでそろえることで持ち運ぶ充電器、ケーブルを減らせるメリットもあります。